2024年の衆議院選挙を受けて、最近、国民民主党が103万円の壁を178万円に引き上げようという政策について議論が沸いています。なのですが、この103万円の壁って何も実害はないのですよね…。なんで議論しているのでしょう…と思ってしまいます。
この年収の壁については「〇〇万円の壁について」の記事でも具体的に記載していますが、仮に103万円をこえて働いても損をしない制度になっています。例えば配偶者の方が103万円を超えて働いたとしても、具体的な影響点は以下の2点です。
【103万円を超えた場合の影響】
・103万円を”超えた額”に対して所得税が発生するので、実際に課税される額は、収入の増分と比べるとはるかに少ない。
・103万円をこえると、配偶者控除ではなく配偶者特別控除という制度に切り替わるが、150万になるまでは配偶者控除と同じ額なので全く影響はない。
※細かな点で言うと、19歳以上23歳未満の学生などが103万円を超えて働くと、親が恩恵を得ていた特定扶養控除から外れますが、配偶者については103万円を超えて働いても全く影響はありません。
どちらかというと、103万円の「税の壁」よりも、106万円の「社会保険料の壁」のほうが「壁」になっているので、そちらを国政では議論していただいた方がよいような気がします。106万円を超えると、厚生年金・健康保険料負担が発生する代わりに、将来に厚生年金が受け取れる等のメリットが発生しますが、手取り額としては減ってしまうので躊躇してしまい、働き控えの原因になってしまっていると思われます。(具体的には「〇〇万円の壁について」の記事を参照。)
なお、この税の壁については、2024/10/31付の日本経済新聞の会員限定記事でも「税の壁は事実上存在しない」と記載されています。理由は上記で記載した内容と同じです。また、同記事では「問題なのは106万円の社会保険料の壁である。」「税の壁を減税と一緒に議論すると余計に誤解が広まり弊害が大きい。」と指摘しています。全くの同感です。
ちなみに、他のメディアでは、日本経済新聞ほど正しく説明をしている記事は見受けられなかったです。他の主要メディアでは「年収が103万円を超えると所得税が発生する」などと説明していましたが、これでは103万円を超えると損をするように受け取れるので、漠然とした不安しか残らないですね…。確かに所得税は発生するようになるので間違いではないですが、仮に104万円働いたとしても所得税は数百円しか発生しないので、正しく制度が理解できるように説明してもらいたいです。その点では、日本経済新聞のように説明をしていただけると、誤解がなくなり漠然とした不安も取り除かれるのでありがたいです。
専門分野でないので推測ですが、おそらく基礎控除額を引き上げて減税を計ろうという議論なのかと思いますが、103万円の税の壁とは無関係ですし、税の壁と結び付けて議論をすることで話題性だけが先行し、これ以上誤解が進むのは避けていただきたいと思います。これからの国政レベルの議論やメディアによる報道がどうなるか、的外れの議論にならないことを期待しています…
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