この記事では、投資を始めるにあたって、代表的な投資先である「株式投資」「債券購入」「投資信託」について説明します。
結論から言うと、初めての方には「投資信託」がお勧めなのですが、投資信託は株式や債券などに投資を行う商品のため、株式投資や債券についても知っておいた方がいいため説明をします。
以下に株式や債券についての基礎知識を記載しましたので、少しずつ「投資」について理解を深めていきましょう。
株式投資について
「株式」とは
株式会社は資金調達の手段の1つとして、株主として出資してくれる人を募集して資金を集めます。その際、株主に発行する証券を「株式」と言います。
株主は株式を保有することで、出資した対価として「株主総会での議決権」や「配当金等を受け取る権利」などを得ることができます。
この「株式」を取得するには、証券会社を通じて株式を購入することになります。
ただし、この「株式」は証券取引所に上場(公開)している会社でなければ、購入することはできません。
証券取引所に上場している企業の株式を取得するには、証券会社に口座を保有し、証券会社を通じて株式を購入する必要があります。
そのため、株式投資を始めたい方は、まずは証券会社と契約する必要があります。
お勧めの証券会社はネット等で比較が出ているので、参考にするといいと思います。
株価の決まり方
株式を購入するには、株式会社が株主を募集(公募)するときに買付けをするのですが、株式会社も頻繁に公募をすることはありません。そのため、株主間で株式の売買を行うのが一般的です。
例えば、「Z株式会社の株を持っているけど100円で売りたい」というAさんと、「Z株式会社の株が欲しいので100円なら買いたい」というBさんがいたら「売買成立」です。
ですが、株を売りたい人は1円でも高く、買いたい人は1円でも安く買いたいものです。
そのため、1円でも「高く」vs「安く」のせめぎ合いの結果で株式の値段が決まっていきます。
具体的には、証券会社で以下のような表を見ることができます。(気配値(=通称「板」)と言います)
この場合、Z株式会社の株について、「101円で売りたい人」と「100円で買いたい人」のせめぎ合いになっています。
上記の状態で「成行」という取引(=その時点の市場価格で売買する取引)で、150株の「売」注文が入ったとすると、下図のように、100円で買いたい人との売買成立で100株分が売れます…①。そして99円で買いたい人とも50株分の売買が成立します…②。
そして、この株の値段(株価)が1円下落します。
株式投資の考え方
では、どうやってこの株式の売り買いで資産を増やしていくかというと、基本は「安く買って、高く売る」です。これをキャピタルゲイン(=値上りした時に売却し、購入時との差分の利益を得ること)と言います。
株式を持っていると、配当金や株主優待等ももらえますが、配当金等でもらえる額より、株式の値上がりで期待できる額のほうが大きいため、株式を購入するなら、基本は「安く買って、高く売る」のです。
例えばトヨタ自動車の株を例にしして、過去の実績を見てみます。
参考:日経会社情報DIGITAL : 日経電子版 (nikkei.com)
参考:配当金について | 株式・格付け情報 | 投資家情報 | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト (global.toyota)
【注意】本データはあくまで過去の実績を記載したまでで、今後も同様であることを示しているものではありません。
株価の値上り率を見ると、2022年のようにマイナスとなっている年もありますが、平均すると17%を超える値上り率です。
一方、配当利回りを見ると、大きな変動もなく、おおむね3%前後となっています。
購入する株式を選択する際、配当金が大きかったり、株主優待が魅力的であったりする銘柄を選ぶのも一つの選択肢ですが、株式の購入はやはり「株価の値上りが期待できる銘柄」を選定して買い付けを行い、「キャピタルゲインを得る」のが基本であると見て取れると思います。ただし、その分大きく値下がりする可能性がある(リスクを伴う)商品であるということも気に留めていただければと思います。
では、「現在、割安な株式はどれ?」とか「今後値上りが期待できる銘柄はどれ?」と考えてしまいますが、実際にそのような銘柄を選び出すのは非常に難しいです。ある程度、投資に対する知識がついてくれば、株式の指標などから割安銘柄の狙いを定めることはできますが、投資経験が少ない人には株式の指標を読み解くのは難しいと思います。
例えば、上記のトヨタ自動車のような有名企業であっても、多くの投資家の目にさらされて値がついている株価なので、現在が「割安」かどうかは判断が付きません。上記の例では年々値上りしていますが、各企業が毎年増収・増益を目指している結果であり、来年も値上がりすることを保証しているものではありません。
特にこのサイトでは「少しずつ金融知識をつけていきつつ、安定的に資産を形成をする」ことを目的としているので、難しい株式指標を読み解いて株式に投資を行うよりは、後で説明をする「投資信託」に投資をすることから始めるのをお勧めします。
債券投資について
「債券」とは
一方、「債券」はインカムゲイン型(保有することで継続的に一定の利益を得る)の金融商品であるという特徴があります。
債券は、国や地方公共団体、企業などの発行体が、投資家から資金を借り入れるために発行する有価証券です。借金であるため、必ず「利息」を付けて返してくれます。発行体がデフォルト(倒産など)しない限り、発行時に定めた利率分の利息と償還日における元本の返済が約束されています。
例えば、日本の国債であれば、「固定金利型 3年満期」「固定金利型 5年満期」「変動金利型 10年満期」があり、毎月の募集期間内に申し込みをすることで購入ができます。
上記の10年満期は変動金利(※)ですが、3年/5年の固定金利型であれば購入時にいくらの利息が付くかが確定していますし、株のように元本割れもないので、安心して購入ができる商品です。
※:日本の「変動金利型」国債は、半年ごとに適用金利が変わりる商品です。ただし最低金利(0.05%)は保証されています。
債券価格の決まり方
なお、国債は、銀行の定期預金と違って「売買」をすることができます。そのため、債券価格が変動することがあります。
例えば、Aさんが「額面金額100万 利率5% 残期間1年」(=1年後に105万になる)の国債を持っているとします。
そして、別のBさんが国債を買おうとしたとき、国から購入せずに「Aさんから購入する」こともできます。
この時、国が募集している債券の利率が3.5%に減っていたとします。
その場合、仮にAさんが保有債券を101万で売りに出したとしても、3.96%の利率(105万/101万=1.0396)となり、国から買うよりもAさんから買った方がお得なため、101万の価格で売買が成立します。その結果、債券価格が上昇します。上記のため、「利率が下がる=債券価格が上昇する」という関係になります。
また、債券価格は「信用リスク」によっても変動します。
冒頭の説明で、「発行体がデフォルトしない限り、元本の返済が約束されている。」と記載しましたが、債券を発行している国や地方自治体が債務不履行などを起こす可能性が高まると、多少の損をしてでも元本確保のために債券が安く売りに出されるため、債券価格が下落します。
債券は売買ができて債券価格も変動しますが、もし債券価格が下落しても、満期まで保有していれば額面金額で償還されるため、基本的には売買によって利益を得るキャピタルゲイン型ではなく、保有して継続的に利息を得るインカムゲイン型の商品であると言えます。
海外の国債について
上記は日本の国債を例に説明をしましたが、海外の国債を購入することもできます。
以下に何カ国かの国債の利率を記載してみました。
格付けは、ムーディーズやS&Pといった国際的な格付会社で実施しています。
国債の安全性・信用度が最も高いと格付けされた国が”AAA”で、以降”AA”→”A”→”BBB”→”BB”…となるにつれて信用度が下がっていきます。おおむね、BBB以上が「投資適格」とされ、それ以下は「投資不適格」とみなされます。
上記の表を見ると、日本の国債は利率が低すぎるので、ノーリターンと言ってよく、あまりお勧めできませんが、外国の債券は比較的高い利率になっています。
ただし、格付けが低く、信用度が低いとされている国は、その分利率も高いのですが、確実に債務を返してくれるとは限らないことを念頭に置いておきましょう。
なお、外国の債券を購入する際は、為替変動リスクが伴うことは忘れないでください。
購入した外国債券の通貨(米ドル・ユーロなど)が、債券購入時点から円安になれば利益が発生し、円高になれば損失が発生します。
上記から、「債券」はインカムゲイン型の金融商品であり、元本が保証されているため、株式投資よりもローリスクと言えますが、「格付けによる信用度」と「為替変動」についてはリスクがある商品であるとお考え下さい。
債券と株式の関係
ここまで、株式と債券について、どのような商品かを説明してきましたが、債券と株式の関係性について少し触れておきます。
債券と株式は逆の値動きを見せる「負の相関関係」にあるのが一般的です。
すなわち、「債券価格が上昇すると株価は下落する」、反対に「債券価格が下落すると株価は上昇する」と言われています。
一般的に、景気が良いときは企業活動も活発になり株価が上昇するため、株式投資で利益を得ようと投資家の資金は株式市場に集まります。そのとき債券市場はというと、景気の過熱やインフレを抑えるために、各国の中央銀行(日銀など)が金融引き締め(金利引き上げ)を行うため、債券価格が下落する傾向にあります。
逆に不景気になって株式相場が下落し始めると、デフレを抑えるために金融緩和(金利引き下げ)が行われ、債券市場が活発になり債券価格は上昇します。
このため、別の記事で説明しますが、自身のポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)を検討する際は、債券と株式をバランスよく組み合わせるとよいと言われています。
上記に記載の通り、債券と株式は、一般的には「負のの相関関係」にあると言われています。
しかし、実際には「債券」と「株式」以外にも、様々な要素が金融市場を動かすため、完全に「負の相関関係」にあるとは限らないと、私は思っています。
※このあたり、私は金融アナリストではないので専門外ですが、過去のデータを見る限りそのように思われます。
ただし、株式と債券は負の相関関係とまでは言わなくとも、お互いに「違う値動きをする」という意味では、自身のポートフォリオを検討する上で、組み合わせに適している間柄であると私は思います。(株式と債券以外に、「リート(=不動産)」も組み合わせの対象としてはよい組み合わせだと思います。)
投資信託について
「投資信託」とは
ここまで、「株式」と「債券」について説明をしてきましたが、この章では「投資信託」について説明したいと思います。
投資信託は、「投資家から集めたお金をひとつの大きな資産としてまとめて、株式や債券など様々な資産対象に分散して投資を行う商品」です。上述した「株式」や「債券」は証券会社などを通じて株式や債券を購入しますが、投資信託は、複数の株式や債券などを組み合わた「ファンド」と呼ばれる商品を購入する形になります。そのため、以下のイメージ図をみてもらえればわかりますが、少額からの投資で世界の株式や債券などに分散投資ができる仕組みとなっています。
株式や債券への個別投資では、「どの会社に投資するか」「どの国の債券を購入するか」と投資先の判断に悩み、選んだ投資先によっては得られるリターンに大きな違いが出てきますが、投資信託では分散投資を行っているため、個別の投資先の選定は必要ありません。
そのかわりに、投資信託では「日本の株式に投資する」「アメリカ株に投資する」「先進国の債券に投資する」など、各投資信託商品ごとに運用方針(※)があり、その運用方針を見てどの投資信託商品(ファンド)を購入するかを決めて投資を行います。
※投資信託購入時に確認する「目論見書」という説明書に運用方針が記載されています。
例えば、日本株式への投資するファンドも多数ありますが、例えば目論見書には以下のように書かれていたりします。
【ファンドの目的】
日経平均株価(日経225)に採用されている銘柄に投資を行い、日経平均株価に連動させることを目指して運用を行う。
⇒上記のように、日経平均株価に連動するとなれば、毎日ニュースでも上がったか下がったかが報じられるので、わかりやすいですね。
投資信託の価格の決まり方
投資信託の価格のことを「基準価額」といいます。また、投資信託の取引単位を「口(くち)」といい、「Z投資信託を××口数分だけ購入」と、口数の単位で購入していきます。基準価額は、この投資信託の単位で10,000口あたり価格で公表されています。
ここでは簡単な例を出して整理してみます。
Z投資信託(ファンド)が、10,000口あたり10,000円(=基準価額10,000円)で募集をしたとします。
Aさんが7万口、Bさんが3万口を購入したとします。
投資信託では販売会社が募集して集めた合計10口の計10万円の資金をもとに、投資信託の運用会社が投資(下記の例では日本の株式に投資)を行います。
その結果、1年後に株価が1.2倍になり2万円の利益を得たとすると、基準価額は、12万円/10口=12,000円となります。
その時、Aさんの7万口の評価額は、
12,000円(この時点の基準価額) ÷ 10,000(1万口単位) × 7万口(保有口数) = 84,000円
となります。(同様に、Bさんの評価額は36,000円となります)
なお、上記の例では、株式投資で株価上昇による利益(キャピタルゲイン)を得られた場合を記載しましたが、配当金等のインカムゲインも含めてすべての利益や損失が基準価額に反映されます。同様に債券投資をした場合も、債券価格の変動や利子支払いなどが基準価額に含まれます。
また、この基準価額は、1日1回、当日の投資信託の取引が締め切られた後で公表されます。なので、投資家は当日の基準価額が確定していない状態で取引を行うこととなり、価格をみて購入を決断する株式とは違います。
投資信託のメリット
上記で、「株式」「債券」「投資信託」のそれぞれの仕組みを説明してきましたが、冒頭にも記載をしましたとおり、投資が初めての方には「投資信託」がお勧めだと思います。
以下に、「株式」「債券」と「投資信託」の違いについて、あらためて説明します。
- 株式
株式については、比較的リターンが期待できる商品ですが、投資経験が少ないうちは株式の指標を読み解くのは難しく、値上りが期待できる割安な株式を選定するには、ある程度の知識・経験が必要です。
そのため、ある程度金融知識を得てから株式投資を始めるのが良いと思います。 - 債券
債券は予定利率が決まっており、インカムゲインを狙う商品のため、株式のように大きなリターンは期待できません。特に、現時点で日本の国債は利率が低すぎるため、あまりお勧めできません。
また、外国債券の利率は比較的高いですが、国によってはデフォルトのリスクと為替変動リスクがあります。
一方、投資信託には大きく以下の2点のメリットがあり、株式や債券のデメリットをカバーすることができる商品と言えることができます。
- 少額投資ができること
多数の投資家から小口のお金を集めてひとつの大きな資産として運用するため、投資家ひとりひとりの投資額は少額からできる仕組みになっています。そのため、投資に回せる余裕資金が限られている個人投資家としては、少額ずつ色々な種類の投資信託に投資を行うことが可能になります。 - 分散投資されること
投資信託は、例えば「日経平均株価に採用されている全銘柄」など多数の企業に分散投資を行うため、特定企業の影響を極小化することができます。
また、株式投資のように無数の会社から選定する必要もなく、「日経平均に連動することを目指す」など投資目的がわかりやすくなっています。
また、一般的には「株式と債券は逆の値動きを見せる」と説明しましたが、投資信託で債券と株式をバランスよく組み合わせることで、株式投資の大きなリターンと債券投資の安定した運用の双方の良いところを相互補完していくのがよいと思います。
投資信託については、別の記事でもっと詳細に説明をしたいと思います。
【免責事項】
投資に関する最終決定は、ご自身による判断でお決めいただきたくお願いします。
本投稿は、作成時点での執筆者による予測・判断の集約であり、今後の状況を保証しているものではありません。
本投稿をご覧いただくことで、ご自身の判断で投資決定をしていただくために必要な金融リテラシーを高めていただくことを目的としています。